【書籍】『でっちあげー福岡「殺人教師」事件の真相ー』福田ますみ 実話?この事件、何かがおかしい【一気読み】

書籍】『でっちあげー福岡「殺人教師」事件の真相ー』福田ますみ 実話?この事件、何かがおかしい【一気読み】 映画

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読了時間|15分くらい

こんにちは。

安室奈美恵さんのことを「安室ちゃん」と呼ぶ世代、1983年生まれの主婦です。

今日は、最近一気読みした衝撃作品をご紹介します。

『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―』(2007年1月発行)著者:福田ますみ

20年前に、日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された事件のルポタージュです。

突然ですが、教育・福祉関係者など、人を導いたり助けたりする職業の人が起こした「良くないニュース」を見たらあなたは何を思いますか?

私はたぶん「またか」とか「怖いな、気をつけよう」などと思いますね。

そう感じるということはつまり、

「報道の内容はある程度事実である」ということが、私の中で前提となっている

ということ。

ニュースやメディアの報道は必ずしも真実のみではないが、「公共の電波でまったくの嘘偽りを語るはずもない」というのが、リアルな私の感じ方なのでしょう。

しかし、『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―』を読み終えたとき、その思い込みが根底からひっくり返されました。

にわかには信じがたいこの出来事、私が当事者の一人だったら。

ページを閉じた後、足元が揺らぐような感覚がありました。

読み終えたあと、あなたは何を思いますか。

タイトルでっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―
著者福田ますみ
出版社新潮社(新潮文庫)
発行年2007年1月
ジャンルノンフィクション(事件・犯罪)、政治・社会(社会学)
受賞歴第六回新潮ドキュメント賞受賞

あらすじ・感想は書いていますが、ネタバレはなし!

この記事を読んだ後でも作品を楽しめるように気をつけました。

概要

小学校の廊下の画像

舞台は、福岡市にあるごく普通の公立小学校。

2003年5月、ある男性教師が行った家庭訪問をきっかけに、すべてが動き出します。

担任していた9歳の男児の家庭を訪れたその教師は、母親との会話の中でとんでもない差別的な発言をしたとされ、やがてそれは「教師による児童へのいじめ」として認定される事態へと発展していきます。

地元紙の報道をきっかけに、この出来事は地域の小さなニュースから一気に全国区へ。

週刊誌が「史上最悪の殺人教師」という見出しでこの教師を実名で報じると、テレビのワイドショーまでもがこぞって取り上げる大騒動となり、教師は停職処分を受けることになります。

舞台はやがて法廷へと移ります。

世論は「体罰教師に正義の鉄槌が下されるはず」という空気に包まれていきますが、裁判が進むにつれて、誰も予想していなかった展開へ。

学校、教育委員会、いじめを受けたとされる児童を診察した医師、550人にも及ぶ大弁護団など、事件に関わったあらゆる人や組織が、それぞれの立場で動いていく様子が淡々と描かれていきます。

著者の福田ますみ氏は、この事件の関係者に直接取材を重ね、報道では語られなかった部分にまで丹念に踏み込んでいます。

一人の教師が、なぜここまで追い詰められたのか。

その問いの答えは、メディアの報道だけを追っていては決して見えてこないものでした。

読み進めるほどに、私たちが当たり前のように信じていた「報道された事実」というものの輪郭が、少しずつ、確実に揺らいでいきます。

この本をおすすめしたい人

この本をおすすめしたいのは、こんな人。

  • 教育や子育てに関わる人(他人事ではないテーマとして)
  • 実話系・社会派ノンフィクションが好きな人
  • 「冤罪」「メディアの暴走」といったテーマに関心がある人
  • とにかく一気読みできる本を探している人

読み始めるやいなや、淡々と語られる信じがたい「でっちあげ」の事実に衝撃を受けます。

ここまででっちあげる?!

無限の情報が入り乱れるこの世界を生き抜くために、

周りに流されず、自分の意見と感じ方を信じる力

これを身につけなければ。

個人的おすすめポイント

個人的なおすすめのポイントをご紹介。

  1. まるで自分がそこにいるような「体感型」のルポルタージュ
  2. 文章が読みやすい

まるで自分がそこにいるような「体感型」のルポルタージュ

『でっちあげ』を読んで何より驚いたのは、ルポタージュとしての完成度の高さでした。

・・・ルポタージュって何?

ルポタージュとは

筆者が実際に現場で取材した事実をもとに、社会的な問題や出来事を伝える記録・報告文学のこと。

ニュースのような「事実性」と「速報性」を持ちながら、小説のような表現力や物語性も併せ持つジャンル。

現場の空気や人々の思いをリアルに伝えることができるのが魅力です。

内容を「知る」だけでなく、「巻き込まれる」ような感覚にさせるのがすごい!

人物の心理描写が丁寧で、男性教師・川上と、校長・マスコミとのやり取りなど、その一つ一つがしっかり描かれていきます。

そんな中、同時に世間に流れていく報道は、事実とはまったく違う姿をしています。

「体罰はあった」

「いじめが行われていた」

川上が行ったと報道されている内容はかなり具体的で、一番の当事者である川上自身が状況にまったくついていけず、身に覚えもない。

「一体何が起こっているんだ」

事実と報道の乖離に混乱する彼の心情と、彼が知らないところでどんどん独り歩きしていく「でっちあげられた報道」

読んでいると、この過程を頭で理解するのではなく、肌で体感しているような感覚になるんです。

その理由はきっと、川上の心理と状況、この二つがバランス良く同時進行で描写される、構成の巧みさによるものだと思います。

とにかく、臨場感がすごい。

ニュース記事を読むときのような「他人事」の感覚にはならず、自分がその渦中に放り込まれたかのような、強烈なライブ感を味わえること必至!

文章が読みやすい

個人的に、文章がものすごく読みやすかったです。

活字が苦手な人でも、ノンフィクション未体験でも滑るように読めるはず。

その理由は、福田ますみ氏の文章の特徴のおかげだと思います。

  • 状況の描写が巧み
    • 丁寧な描写により自然と頭の中に映像が浮かぶ
    • まるで映像を「見て」いるかのような感覚に
  • 文章がスマート
    • 比喩がわかりやすい
    • 独特の癖がない
    • 小難しい言葉を使いすぎない

ノンフィクションという性質もあるかもしれませんが、とにかく文章がスマートな印象。

しかも、エンタメ作品ばりに展開が早く、トップスピードでラストまで突き進む感じ。

退屈している暇なんてありません。

読んでみたいけど、ノンフィクションって難しそう・・

もちろん相性や好みもあるかもしれませんが、そんなイメージがある人の参考になれば幸いです。

印象に残ったこと

全体を通して刺激的な内容が続く本書の中で、特に印象に残ったことを記します。

息をするように平気で嘘をつく母親

私にとってこの本1番の衝撃は、ダントツで児童の母親・和子の嘘。

怖い!!

学校に対して、医師に対して、そして法廷でも、和子は平然とためらいなく嘘を重ねていくのです。

追い詰められて仕方なくつくような嘘ではなく、もはや自身の経歴から今回の事件についてまで、語るほとんどが嘘ばかり。

物語が進むにつれて明らかになっていくそんな彼女の言動が、私にとって一番恐ろしいポイントでした。

この、相手や状況を都合良く動かすため、平気で嘘をつき周囲をコントロールする感じ。

思わず、サイコスリラー『悪の教典』のハスミンを思い出してしまいました。(2011年 / 著者:貴志祐介)

『でっちあげ』の母親の虚言は、異様すぎてリアリティが感じられないほどでしたが、これはフィクションではなく現実なんですよね。

本文で描かれている経歴に関する詐称なども含めて考えると、この母親は詐欺師のような「嘘つき」ではなく、共感性欠如のような、もっと根深い心の問題を抱えているように思えます。

強すぎる学歴コンプレックス、自信がない、見栄っ張り、共感性欠如、そういった特性が積み重なっての、虚言癖なのかも。

一人の人間の嘘が、学校を、報道を、そして裁判所までをも動かしていく。

これが現実であるということが、私にとって最大の衝撃でした。

「なにかがおかしい」でも誰一人声をあげない

本書の中でもう一つ印象に残っているのが、教師の川上を取り巻く保護者たちの沈黙です。

川上は、でっちあげられた体罰やいじめの罪を着せられ、学校を追われ、いわれのない罰を受けていきます。

しかし読み進めていくと、他の保護者たちの多くが心の中で「川上は本当は良い先生だ」「あそこまでひどい体罰なんてなかった」そう思っているということが分かります。

それなのに、誰一人として証言台には立たない。

「関わりたくない」

「和子に仕返しされるのが怖い」

「自分の子供がいじめの対象になるかもしれない」

そうした恐れが、保護者たち一人ひとりの中にあったのだと思います。

この状況については、ただ単純に「ひどい!」とは言い切れない、やりきれない気持ちを感じました。

自分がもし周囲の保護者の一人だったとして、声を上げる勇気があるだろうか?

「自分や家族を守るために沈黙する」あるいは「正しくあるために行動する」か。

正直、後者を選択できる自信がないです。

この事件でも、報道されている内容と事実が違うことに、当事者のほとんどが薄々気づいていたはず。

けれど、その違和感は誰の口からも語られることなく、表に出てくることはありませんでした。

「なにかがおかしい」

そう感じている者が、大勢いたのに。

その事実こそ、本書が一貫して突きつけてくる苦々しさとして、心に残っています。

まとめ:

この本を読む前は、メディアによる一方的な糾弾なんて信じられないと思っていました。

でも著者の丁寧な取材と時系列の解説により、「でっちあげ」がなぜ、どのようにして起きたのか分かりました。

日々メディアによる報道を目にする視聴者として、それらをどう捉えるか。

報道をそのまま受け取らないよう、「物事は多面的である」ということを頭に刷り込みました。

まら、ルポルタージュという形式は、ただ事実を並べるだけのものではないのだとあらためて実感しました。

本文全体を通して、福田ますみ氏の魂や願いのようなものを確かに感じ取ることができたからです。

著者自身が現場を歩き、関係者に向き合い、丹念に積み上げていった取材の形跡に感動しました。

それでいて、文章はとても読みやすく、最後まで一気に駆け抜けるように読んでしまう。

社会派のノンフィクションでありながら、これほどノンストップで読める作品にはなかなか出会えないと思います。

次回は、この『でっちあげ』を原作とした映画について。

この衝撃と恐怖が、どのように映像化されているのか?

ではまたね!

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